現代はテクノロジーの影響により仕事の作業効率が向上し、マルチタスクで業務をこなす人が増えています。一つのことにしか集中できないのは「要領が悪い」とみなされ、作業を同時並行で進めるように注意されることさえあります。
そのような社会的風潮なので多くの人は同時並行で仕事ができるように努力をする。
しかし、マルチタスクは集中力と作業効率を衰えさせるというネガティブな面があるのです。
一般的に私たちの脳は前のタスクが残っている状態で、次のタスクを行おうとすると、なかなか切り替えができないようです。
例えばタスクAとタスクBという仕事をしているとします。タスクAの業務がまだ残っている状態でタスクBへと作業移行すると、「切り替え」がうまくできずにあまり集中できない状態となってしまうのです。
一応、集中力は戻るのですが、一定時間かかるようです。
あなたの周りにも複数の仕事を抱えて効率よくやっているように見えるビジネスパーソンがいるかもしれませんが、その実作業効率悪すぎ、あまり進捗が良くない状態に陥っているかもしれません。
本来作業は一つに絞って集中的に行う方がいいのです。
加えて、マルチタスクは作業記憶にも悪影響を及ぼします。作業記憶とは今頭にあることを留めておくための「知能の作業台」的なものです。電話をかけるために一時的に電話番号を覚えるような作業が作業記憶と言えるでしょう。
マルチタスクに慣れきっている人はこの作業記憶が悪いのです。
ある実験では、モニターに次々と文を表示して、それを150人のティーンエイジャーに見せた。その中にはマルチタスクに慣れた若者も含まれていた。モニターに表示されたのは、きわめて正しい文(「朝食にチーズサンドを食べた」など)もあれば、めちゃくちゃな文(「朝食に靴ひもを一皿食べた」など)もある。どれが正しいかを答える課題だ。(中略)文はわずか2秒しか表示されないのだ。加えて、スクリーンには気を散らすような情報が表示されていて、それを無視した上でだ。クリアするには、作業記憶がしっかり機能していなければならない。
果たして結果は?マルチタスクに慣れた若者の方が、結果が悪かった。つまり、作業記憶が劣っていたのだ。
『スマホ脳』p.91-92
作業記憶自体使う頻度は決して多くはないと思いますが、見ている情報の覚え間違い、見間違いなどが起こるのではないでしょうか。
特にスマホでは簡単に大量の情報にアクセスできるわけですから、正しい情報を正しく認識することは難しくなるのではないかと思います。
現代においては良いこととされているマルチタスク。しかしそのような作業同時並行が私たちの集中力と作業記憶能力を悪くさせているというのは皮肉としか言いようがありません。
仕事やスマホを使用する際はできるだけ一つの情報を整理してから次の情報を調べていったほうがいいのではないでしょうか。