今の大学受験生は大変である。私は被害を食らわなかったのだが、三大都市圏の大学の入学定員充足率が厳しくなっているそうだ。
要は、大学側はある程度の入学辞退者を想定して本来の定員よりも多めに合格者を出すようにしていた。しかしお役人たちの命令によりその基準が厳しくなっているということだ。
つまりつまりつまり大学側は合格者を少なくしなければいけない状況になっているのだ。ということは、受験のレベルも当然上がるわけだ。少なくなってしまった合格の枠を競うのだから。
これは大学側にとっても受験生の側にとっても迷惑なことである。どのように迷惑なのか。
受験生にとって迷惑なこと
受験生にとってはどのように迷惑なのか。今までの文脈を考えれば受験のレベルが上がる、ということだが、それは冷酷だが言い訳でしかない。レベルが上がったとしてもしっかり勉強すればいいだけの話だ(定員の厳格化の被害を食らっていない私が言うのもおこがましいが。すみません)。
まあそのようなことに備えなければいけないことは受験生がわかっていると思うのであえて言う必要もなかったか。
ではどのように迷惑なのかというと、経済的に裕福な受験生の方が合格可能性が高まるということである。確かに受験のレベルが上がることに関しては皆条件は同じだ。しかし合格可能性が高まるというのなら、経済的に裕福な受験生の方が有利なのである。
どういうことか。つまり「数打ちゃ当たる作戦」である。レベルが高くなったとしても、いろんな学部を受けまくればどこかには受かる可能性がでてくる。もちろんしっかりと勉強していなければならないが。
どうしても早慶上智に合格したければ学部なんてこだわってられない。法学部、経済学部、文学部、SFC、ワセダの政経、外国語学部とにかく受けまくる。そうすれば(記念受験でない限り)、本気で進学したいと勉強してきた受験生はどこかに合格する可能性が高まるわけだ。
これが「早慶上智の法学部に行きたい!!!」という考えであれば、「学部受けまくり作戦」より合格可能性は低くなる。マーチや日駒も同じである。特定の学部を狙うよりも、複数の学部を受けまくったほうが合格可能性は高まる。
ということはいやらしい話、受験費用に金をつぎ込んだ者勝ちとなる。私大は1つの学部(一般入試)を受けるのに35000円くらいはかかる(私が受験生の時はそうだった)。センター利用とかだったらもっと安くなるが。
決して安くはない。それでも経済的に余裕があるのなら、多くの学部を受けることができる。一方、経済的に余裕がないなら、あまり多くの学部を受けることはできない。しかも地方住みで東京の私大を受ける受験生は受験費用に加えて、ホテルの宿泊費もかかる。
結局のところ定員厳格化の影響をあまり受けない受験生は、首都圏住みの裕福で教育に恵まれた家庭の子となる。地方の経済的に裕福でない家庭の子はまず受験の機会から不利益を被ることになる。
これが受験生にとって迷惑なことである。地理的、経済的格差によって受験の機会から差が生じているのである。
大学側にとって迷惑なこと
大学側にとって迷惑なことは入学定員の充足率が上回ってしまった場合、私学助成金が減額されたり、チャラにされたりすることである。
助成金が減らされるのは大学側にとって痛いことだ。助成金が減らされることによって十分な研究もできなくなるし、学生の経済援助も困難になる。確かに受験生の受験費用や学費などで潤ってる部分もあるが、それだけだと不十分だろう。
それに、そんな形で財源を得ること自体、あまり良い気持ちにはならないだろう。受験生やその親に多大な経済的負担を負わせているのだから。
何よりも大学にとって痛いのは、経済的には困難であるが、学力が高く進学意欲のある受験生を取り損ねてしまうことである。財源が潤わなければ、給付型の奨学金などでそのような受験生を入学後にバックアップすることができない。
というか受験の段階で既にそのような受験生は不利なのだが。受験費用がべらぼうに高いので。大学側もその費用が大学の財源となるので容易に下げることはできない。
このような経済的理由によって優秀な受験生を取り損ねてしまうのは大学側にとっては本当に残念極まりないし、受験生にとっても悔しさがこみ上げてくるだろう。
結局のところ経済的な問題が解決されていないので、ただ単に格差社会を生み出しているだけである。受験のレベルが上がることは好ましいことであるが、この定員の厳格化は三大都市圏の大学で行われているのである。
本来だったら、三大都市圏だけでなく全国の大学でそれをやり大学全体のレベルを上げるべきなのに。そうすれば日本の大学全体の価値が上がるのであるが、お役人はそんなことをしないであろう。
まとめ
私大の定員厳格化からわかることは地理的、経済的格差をさらに生むということである。それ以上でもそれ以下でもない。
確かに定員数を厳しくしたらその分競争率が高まるのでレベルの高い受験生が集まり、そのような学力の高い受験生を大学は取ることができるだろう。
しかしその一方で経済的に恵まれない受験生は入学するかどうかのところから不利益を被ることになる。
お役人が「僕たちの定めた定員の充足率を上回った大学にはお金をあげないもん!!」と無邪気に言っている以上大学側も自由にできない。
結局、根本的な問題が解決されないまま改革は実施されるのである。この国の教育に関する茶番劇はとどまることを知らない。
まさにtomorrow never knowsである。