ハーバード大学はなぜ訴えられたか? 深刻さを増す米受験戦争 https://t.co/oj9W6uY0F7
— パンセ (@penser_hateb) 2018年8月16日
以前ツイッターで話題にしたのですが、入試の審査基準が曖昧で訴訟問題が発生しているらしいですね。
そもそもの問題ですが、一切批判の余地がない理想的な入試制度があるのでしょうか。
そういう入試制度を作ることは難しいと思います。なぜなら一見理想と思われる入試制度も必ず何かしら欠陥が存在するからです。
本題ですが、入試の話題にちなんで、アメリカ、中国、韓国の入試制度と日本の入試制度を比較してわかることを書いていきます。
最初は話題になっているハーバード大学の入試で問題になっているアメリカ。
アメリカの入試制度とその問題点
アメリカの大学の入学試験はどのような選考プロセスを踏むのでしょうか。見ていきましょう。
1.GPA:これは高校時代の内申書。アメリカの入学試験においては高校時代の成績表が必要となります。
2.SAT:SATはアメリカの大学進学を希望する者に対して課す試験。日本でいう大学入学共通試験(旧センター試験)。ただ、日本のセンター試験と異なり、年に7回実施されまず。この7回の中でのハイスコアを大学側に提出します。
3.履歴書:スポーツや課外活動などの実績を示したもの。
4.エッセイ:自己PR。
5.推薦状:学校の先生やクラブコーチのお墨付きみたいなもの。
6.面接:その通り面接。
アメリカの入学試験は以上のような選考プロセスを踏む。雑に言うと、日本の大学の推薦やAOのような感じです。
日本と異なり、浪人をして再受験というシステムがないです。なので、もし社会人とか他の大学から移りたいと考えた場合、編入をして入ることになります。
アメリカの大学入試制度の問題点
アメリカの大学入学試験の問題点は審査基準が曖昧であるからであることだと思います。
例えば、「なぜ、不合格だったのか」という質問が出たとしたら、「それはご縁もありまして…」みたいな感じにいなってしまいます。具体的な合格基準を明示しないんですよね。
ルールの明確化とフェアプレーを重視するアメリカ社会において、そのような姿勢を示すというのはある意味では矛盾していると感じます。
そのような曖昧性ゆえ、アメリカ社会では大きな問題になっているのです。
ただそうなってしまうのも当然と言えば当然ではあります。上の6つの入学試験における選考プロセスにおいて客観的な指標を持つのはSATしかない。
GPAも客観的な指標となると主張する人もいるかもしれないが、高校のレベル自体が様々だから、あまり意味がない。
具体的に述べると、日本の高校に置き換えて考えればわかりやすいです。例えば偏差値70の高校の評定平均が4なのと偏差値が50の高校の評定平均が4では「重み」が違いますよね?。
明らかに前者の方が「重み」があるのは言うまでもないです。
そういう風に高校のレベルによって成績の価値が異なることから、GPAはあまり客観的な指標を持たないのです。
それ以外の面接や履歴書は客観的な性質を持たない。審査する側の恣意的な判断となる。
そう考えると、アメリカの入学試験自体が客観性を有する要素がほぼないので、曖昧になってしまうのは避けられないということになります。
中国の入試制度とその問題点
中国は日本と同じ東アジア文化圏であり、その入試の苛烈さが日本でもしばしば話題になります。
次章で述べる韓国も同様ですが…。
中国の入試は全国普通高等学校招生入学考試、通称「高考」と呼ばれるものがあります。
受験生は毎年1000万人前後、2017年は940万人でした。日本と比べると(人口比が違うので何とも言えないが)、その受験生はかなり多いことがわかります。
日本のセンター試験の受験生(大学入学試験もおそらく)は50~60万人です。
中国は学歴の高さがそのまま社会的地位にダイレクトに影響するので、中国人は子供のころからそれはもう死ぬ気で勉強をすることになります。
筆記試験という努力が確実に報われる面はありますが、それが社会的地位にそのままつながるというのは残酷な現実でもあります。
中国では浪人する人自体ほとんどいないため、浪人は選択肢には入らないです。
なので実質一発勝負であります。
良くも悪くも筆記試験が人生を左右するのです。
中国の大学入試制度の問題点
中国の大学入試制度の問題点は、「勉強し試験に合格しさえすればよい」みたいな環境で育てられるので、傲慢な人格が形成されやすい点です。
一方、子供は試験に合格しなければならないプレッシャーから、精神的な悪影響を受けます。
ある意味では、完全に試験のための勉強、人生における社会的地位のための勉強という極めて「合理的」な勉強を強いられます。
その他にも格差社会という問題もあります。都市部と地方の問題。
中国の大学は地元出身者を優先して入学させるシステムになっています。北京大学なら北京の受験生を優先させて入学させる例を考えればわかりやすいです。
そうするとそれ以外の地域の人、さらに有益な情報が入ってこない農村部はかなりの不利益を被ることになります。
つまり客観性をもった筆記試験を実施しているのにも関わらず、努力が報われるとは限らないという歪な事態が起きているのです。
中国の入試において言えるのは、入試の成果がそのまま社会的地位につながるので、あまりに過剰になっているということです。また、大学が出身地によって差別をするので、地方に住む人はもろにその被害を被ることになります。
韓国の受験制度とその問題点
韓国は「大学修学能力試験」、通称「修能(スヌン)」という試験が行われます。
その「修能」に加え、各大学で実施する小論文や面接で合否が決まります。
ただ、実際のところ、ほとんど「修能」で合否が決まるようです。
韓国も中国同様出身大学でほとんど将来の社会的地位が決まってしまう。
ゆえに韓国もまた受験競争は激しいです。日本人の大学進学率が5割強なのに対し、韓国は8割強なので、学歴がどれほど重要なのかがわかるでしょう。
このような社会的背景もあるので、韓国は国をもって受験生をバックアップします。
例えば、もし試験に遅れそうな受験生がいれば、パトカーや白バイがその受験生を乗せ、試験会場まで乗せていってくれます。
これは日本のニュースでもしばしば話題になるので知っている人も多いと思います。
そう考えると、中国のように地元出身者をひいきするみたいな制度はないので、割合印象は悪くないように思えます。
しかし、問題点として、それでも受験競争が過激になりすぎていること、それがそのまま社会的地位につながってしまうことを考えると社会的な閉塞感が生じるのは否めないように思ええます。
中国・韓国の入試から言えること
日本と比較した場合、受験で合格するということがどれほど重要なものかがわかります。
ある程度やり直しがきく日本と違い、就職において露骨に影響が出るし、あまり良い言葉ではないが、はっきり勝ち組、負け組に分断されてしまう恐怖があります。
また、個人のもつ資質、能力よりも学歴という画一的な価値観でしかその人を評価しないという点で、多様性も認められていないように思います。
経済的な格差も学歴に影響を及ぼすので、それは日本と似たような面がありますよね。
それ以上に浪人という選択肢がほぼないというのが、ある意味ではつらいところですが…。
浪人については様々な意見がありますが、特に昨今では浪人に対して否定的な見方もありますが、もう一度リベンジできるという点で、有益な選択肢であると思います。
それがほぼないとなれば、試験一発勝負に対し、過度なプレッシャーがかかり人生において悪影響を及ぼすのではないでしょうか。
日本の大学入試のシステム
最後に日本の大学入試のシステムを見てみましょう。
ちなみに2020年度よりセンター試験が大学入学共通試験に変わります。
一般入試:現在は主流の入試制度。センター試験、国公立大学の二次試験、私立大学の学部(大学によっては学科別)の独自試験があります。これらの入試制度すべてにおいて、学校の評定平均や部活、課外活動の実績は必要ないです。100%学力の入試。
大学入学共通試験(旧センター試験)はほとんどの国公立大学が受験生に課す試験です
特徴として、全問マーク式で試験科目。科目は、
・国語
・数学
・外国語
・地理
・歴史
・公民
・理科
となっています。
共通テストについて理解しよう | 大学入試の基礎知識 | 河合塾 Kei-Net
レベルは高等学校の教科書レベルです。
スタンダードなレベルだと言われていますが、対策しなければ点数はとれないし、そもそも高校の勉強のレベル自体が高いので、土台を築くのにも時間がかかる受験科目も多いです。
次に国公立の二次試験について。
国公立の二次試験は主に論述形式です。
記号問題もありますが、全体として記述式の問題が多いです。
試験科目は国語(だいたい現代文、古文、漢文)、数学(IAⅡB理系ならⅢC)、英語。
文系なら数学か歴史(文学部とかがどっちか選べというところが多い)の選択になります。理系はこれらに物理とか生物とか化学が加わります。
大学によっては小論文を課しているところもあります。
次に私立大学の一般入試についてです。
構成としては、大学入学共通テスト(旧センター試験)と同様マークセンスの問題がが多いです。
記述式の問題もありますが、私立大学の受験生の多さから採点コストがかなりかかるため、あまり多くは出題されません。
それでも、記述主体の私立の大学はあり、例を挙げると、慶応義塾大学の文学部では、試験時間2時間、英語の辞書2冊まで持ち込みOKとなっています。
難易度の高い大学は記述の問題をそれなりに出題すると思いますが、おおむねマークセンスの問題が多いと思います。
以上が一般入試全般についてです。
次に推薦系の入試の話に入ります。
公募制一般入試:これは各大学の出願条件を満たすことと自分の在学する高校の推薦状を得れば出願できるものです。
試験方式はざっくりいうと、面接や小論文です。
内申点と総合して評価する大学が多いので、学校の中間テストや期末テストが重要になってきます。
公募制特別入試:これも推薦ですが、公募制推薦入試よりも評定平均の基準が緩いことが多いように感じます。重要になるのは部活動や課外活動の実績です。
例えば、野球部なら甲子園出場という実績があると大きなアドバンテージとなります。
指定校推薦:大学が特定の高校を指定し、実施する試験です。試験と言っても校内の選考が通れば、よほどのことがない限り通ります。
ただ、枠がとても「狭き門」で、募集人数が1人とか2人なので、学校の成績も維持しつつ、部活も頑張り、教員から好かれなくてはいけないです。
AO入試:これは大学が求める受験生の理想像と合致しているかどうか、という試験です。試験は小論文や面接が主ですが、大学側が大学の理念や理想に則った受験生を獲得しようとするため、かなり厳密に精査すると思われます。この入試は従来の推薦入試と異なり、学校の推薦を必要としません。なので自分でエントリーできます。
以上が日本の大学入試のざっくりした内容です。
日本の大学入試において言えること
アメリカの入学試験(実は試験というより審査)と比較すると、筆記試験で合否が決まるという点でアメリカの入学審査よりも公平性が保たれていると言えます。
家柄や出自に関係なく筆記試験の点数で合否が決まるので、たとえ家庭環境が良くなく、貧しかったとしても、難関の大学に合格することが可能です。そしてそのことによって人生が好転してゆく可能性を大いに秘めているのも事実です。
しかし、これは一般入試の話です。
その点、推薦や指定校、AOではその公平性は担保されないので、どうしても志望大に合格したいなら一般入試の対策もしておいたほうがいいです。
推薦やAO入試には。
・「一般入試で入らないのはけしからん!」
みたいな批判があります。
確かにその批判はわかなかくもないのですが、100%一般入試にしてしまうとそれはそれでバランスがなくなるのではないか、かなり歪になってしまうんじゃないかと感じます。
また、一般入試だと仮面浪人などで中退されてしまう可能性もあるので、そういう点からみると、推薦やAO入試で学生を獲得することは重要なのではないかと思います。
大事なのはバランスだと思います。
まとめ
ざっくりまとめると、
アメリカの大学は高校時代の成績+学力が重んじられる
中国韓国は受験(筆記試験)の競争が激しい
日本は今のところ一般入試・推薦があり、国公立は一般入試が主流で私立は推薦AOが多い
と言えます。
どの入試制度が良いのか、一概に言うことはできませんが、比較的日本の大学入試はバランスが保たれているように思います。
以上です。
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